少し前に、張り切って決定版!利益相反の見破り方~スパイは誰だ~
という記事を書きました。
復習にもなって利益相反を見逃すことはなくなったのですが、
じゃあ利益相反だったらどうしたらいいの?
わっ、1人合同会社だよ。。
というパターンに出会った場合の対応についてです。
結論
社員が1人だけの合同会社は、利益相反承認決議は不要です。
登記申請時には社員が1人であることを証明するために
原本証明(会社実印で捺印が必要)をした定款を添付します。
そもそも利益相反取引ってなんなん
利益相反とは、ざっくり言うと「お互いの利益が相反する取引」です。
この「お互いの」とは合同会社の場合、
「合同会社」と「業務執行社員」です。
例えば、合同会社すぐみるとその業務執行社員だいこんのような感じです。
では、利益が相反するとはどういうことでしょうか?
この合同会社すぐみるとだいこんは、
同じ方向を向いている必要があります。
例えば、会社が不動産を購入する場合には、
「できるだけ安く買いたい」
安く買うことに合同会社すぐみるにも
だいこんにも利益がある。
といった感じです。
しかし、こんな場合はどうでしょうか。
だいこんが所有している不動産を合同会社すぐみるに売却する場合。
合同会社すぐみるは「できるだけ安く買いたい」ですが、
だいこんは自分が所有している不動産なので、
「できるだけ高く売りたい」と考えるのが一般的です。
この「できるだけ安く買いたい」と「できるだけ高く売りたい」
って、矛盾していると思いませんか?
同じ方向を向いてないですよね。
これが利益相反取引というやつです。
何で利益相反取引ってよくないの?
今回の事例の場合、
合同会社すぐみるの不動産購入の意思決定をするのは、
業務執行社員であるだいこんです。
そして不動産売却の意思決定をするのもだいこんです。
これでは、もしかしたらだいこんが自分の
「高く売りたい」という利益を優先させてしまうかもしれません。
そうなると合同会社すぐみるは、不動産を高く買ってしまうことになり
不利益となります。
これって、会社にとってよくないですよね。
なので、利益相反取引ってだめだよね。とされているのです。
では、この「会社にとってよくないよね」の会社とは何を指しているのでしょうか。
会社(合同会社)の不利益とは誰の不利益なのか
株式会社では、会社は出資をしている「株主のものだ」とされており、
会社の不利益=株主の不利益となります。
合同会社の場合は、出資をしているのは社員となるので、
「会社は社員のものだ」ということになります。
なので、会社の不利益=社員の不利益となります。
そこで、会社の不利益になるような取引(利益相反取引)
をする場合は、社員の同意が必要だよね。
とされているのです。
合同会社の利益相反承認決議
では、社員の同意とは具体的にどんなものでしょうか?
会社法595条1項で定められています。
業務を執行する社員は、次に掲げる場合には、当該取引について当該社員以外の社員の過半数の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
例えば合同会社すぐみるの社員が↓のような構成だったとします。
この場合、だいこんを除いた、
おくら・かぶ・もものうち過半数の承認が必要ということになります。
その過半数の承認が分かる書類を登記申請書に添付することになります。
そしてここからやっと冒頭の結論に結び付くのですが、
この社員がだいこん1人だったらどうしよう?というのがこのブログのテーマでした。
社員が1人だった場合の承認決議
もう一度結論を書きます。
社員が1人だけの合同会社は、利益相反承認決議は不要です。
登記申請時には社員が1人であることを証明するために
原本証明(会社実印で捺印が必要)をした定款を添付します。
承認決議が不要な理由は、この承認決議はあくまで
不利益を受けるかもししれない社員の保護です。
なので、他の社員がいないなら不利益受ける人いないよね、
決議の意味ないよね、ということで承認決議は不要です。
定款を添付する理由
社員が1人のため承認決議が不要な場合、
登記申請時に定款の添付が必要です。
その理由は、「間違いなく社員は1人です!!」
ということを証明するためです。
え?謄本付けたらいいやん。ではないんです。
なぜなら、合同会社で登記される社員は以下のとおりだからです。
1.業務執行社員
2.代表社員
3.代表社員が法人の場合はその法人の職務執行者
今回の事例でいうと、
業務執行社員や代表社員ではない普通の社員おくら・かぶ・もも
は登記事項ではないため、
登記事項証明書を見ても名前は載っていません。
しかし、この普通の社員は定款の絶対的記載事項なので
定款を見れば名前が載っています。
なので、定款を添付することで「他の社員はいません。なので承認決議はしていません。」
ということを証明することになります。
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