3ため契約(新・中間省略登記)の登記手続きについて

不動産登記

私は実務についたばかりの頃、
「さんためけいやく」に怯えていました。

その得体のしれない言葉の響きと
何かよく分からんけどいつもと違うぞ。
みたいな雰囲気に押されて
食わず嫌いみたいになっていました。

きちんと理解すれば何てことないのです。

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3ため契約(さんためけいやく)とは

まず、3ため契約とは
「第三者のためにする契約」の略です。
「新・中間省略登記」とも言われるそうです。
うちの事務所では「3ため」と言ってます。

この3ため契約は民法537条で定められています。

(民法第537条)
1.契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2.前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3.第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。

理解できません。。

登場人物は3人です。
図にすると、こんな状況です。

3ため契約ではこんなことが行われています。

①ゴボウはミカンに不動産を売り渡す契約をした。そして、契約時にこんな特約を付けた。
・ミカンは売買代金を全額支払うまでに最終的な所有権の移転先となる者を指定すること
ゴボウは所有権をミカンが指定した者に対し、売買代金全額の支払いを条件として直接移転すること

②ミカンは最終的な所有権の移転先としてカブを指定した。

③カブはゴボウに対し、所有権を受ける旨の意思表示をした。

④ミカンはゴボウに対し、売買代金を全額支払い、ゴボウは受領した。

⑤なので所有権はゴボウからカブに移転した。

ゴボウとミカンの売買契約を「第一契約」
ミカンとカブの契約を「第二契約」と呼んだりします(うちの事務所だけ?)

第一契約のときに、予め所有権移転先を取り決めておくのです。
さらに、きちんとゴボウに売買代金が入ってから
所有を権移転するよう、所有権移転時期特約も決めておきます。

図でみると、そんなに難しくないですよね。
では、肝心の登記申請はどうなるのでしょうか?

どんな登記申請になるの?

流れ⑤にあるように、所有権はゴボウからカブに直接移転します。
なので、登記申請はいつも通りこんな感じです。

登記申請書

権利者 カブ
義務者 ゴボウ

じゃあ、いつもと何が違うのかというと、
それは、登記原因証明情報の内容と印鑑をもらう相手が違うのです。

登記原因証明情報の内容

まず、登記原因証明情報に記載する当事者が3名になります。
通常の売買だと
権利者:カブ
義務者:ゴボウ
ですが、3ため契約の場合こうなります。

登記原因証明情報

当事者 権利者 カブ
    義務者 ゴボウ
    売買契約の買主 ミカン

そしてもう1つ登記原因証明情報で違うところは、
「登記の原因となる事実又は法律行為」です。
冒頭の「3ため契約とは」で記載した
①から⑤の内容をそのまま記載します。

捺印する人

登記原因証明情報には
カブ、ミカン、ゴボウの3名から捺印をもらいます。
※法務局に提出が必要なのはミカンとゴボウの捺印書類のみです

ミカンは登記申請には登場しませんが、
登記原因証明情報には捺印をもらい、
申請書に添付が必要です。

そして、法務局への提出は不要ですが、
一般的には実印で捺印してもらって印鑑証明書をもらいます。

中間省略登記ってだめなんじゃないの?

私が初めてBOSSから「3ためだよ」と言われたとき、
受験生時代の「中間省略登記はやったらだめ」
という知識と混同して、

うちの事務所はやってはいけないことをやっているのではないか。。
と不安になりましたが、これは杞憂でした。
中間省略登記とは、こういうことです。

①ゴボウはミカンに不動産を売り渡す契約をした。
②ミカンはゴボウに売買代金を支払い、所有権はミカンに移転した。
③ミカンはカブに不動産を売り渡す契約をした。
④カブはミカンに売買代金を支払い、所有権はカブに移転した。
「登記費用も勿体ないし、節税のためにも、ゴボウからカブに移転しようか」ってことでゴボウからカブに所有権移転登記をした。

・・・アウトです。


だって、本来ゴボウ⇒ミカンへ所有権移転して、
ミカン⇒カブへ所有権移転したのに、
それを勝手な都合でゴボウ⇒カブに移転することは許されません。
なぜ許されないかというと、
「正しい取引の経緯が反映されないから」だそうです。

この不動産はね、ゴボウからミカンに移転してね、
その後ミカンからカブに移転したんだね。
という正しい取引履歴が
登記簿を見てきちんと分かるようにしないといけないのです。

抵当権抹消のときに、解除日付より前に銀行が合併してたら
1件目:合併による抵当権移転
2件目:抵当権抹消
みたいな感じで順を追ってきちんと登記しないといけないのと同じです。

売買契約書は忘れずに・・

本当に3ため契約なのか?というのは、
きちんと売買契約書を見て判断することになります。

売買契約書をもらうのは、、そうです、
仲介業者(不動産屋さん)です。

きちんと確認して手続きを進めるようにしましょう。

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