不動産登記における物件調査の重要性と調査方法

不動産登記

これも、試験勉強では出てこないけど、
実務ですごく大切なことです。

私は最初、この物件調査がすごく苦手でした。
理由は、「なんかぴんとこない」です。

ベテラン事務員さんが
粘り強く根気強く教えてくれてここまで成長しました。

ありがとう事務員さん。

※注意:この記事はあくまで司法書士目線での物件調査です。用語解説等もざっくりこの程度分かっていればいいかなという基準で書いていますのでご了承ください。

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まずは、物件調査のざっくりしたイメージ

まずは、司法書士における「物件調査」
のざっくりしたイメージをお伝えします。

物件調査とは

売買でも相続でも、不動産登記の依頼がきたときに、まずすること。
それが物件調査です。

物件調査とは?
一言でいうと、
前面道路や近隣の土地等、他に所有している不動産はないか?
ということを字図(地図)で調べます。

あくまで司法書士の業務である登記的な目線からの調査になるので、
現地に行って、境界がどうなってるとか
そういったことではありません。

なぜ物件調査は重要なのか?

ここもまずは簡単なイメージでお伝えすると、
物件調査を怠って所有権移転を漏らしてしまった不動産があると、
後々大変なことになりかねない
からです。

売買登記と相続登記で少し意味合いが違ってきますが 、
例えば、何十年も前にやっている相続登記のときに
調査漏れしていて、登記できていない土地が見つかった。
すでに時が経過しすぎており相続人を探すのが大変。
とかです。

物件調査のやり方

物件調査と言っても、別に現地に見行くわけではありません。
字図(地図)を取得して調べていきます。

字図(地図)を取得する

売買や相続の対象土地の字図(地図)を取得します。
こんな感じ。
今回は17-2が対象の土地です。

怪しそうな周辺の土地の登記情報を取得していく

怪しそうなとは、17-2の所有者がもっていそうな土地ということです。
持っていそうなとは、ずばり「前面道路」と「ゴミ置き場」です。
前面道路とゴミ置き場は、近隣住民みんなで共有して所有していることがあるからです。

前面道路

前面道路とはここのことです。

前面道路とは、敷地に2m以上接する建築基準法で認定された道路の事。
らしいです。
難しいこと書いてますが、要は「家の前の道路」ってことです。

なぜ前面道路を所有している可能性が高いかというと、
その道路を所有していないと公道に出られないからです。

単純ですよね。
もし、17-4が知らない人の土地だったら家から出られません。
(もちろん賃借権等例外はあります)

公道か私道か

この前面道路は公道の場合と私道の場合があります。
前面道路が私道の場合は、登記情報を取得して所有者を確認していきます。

公道国や市など地方公共団体が所有している道路字図に「道」とかいてあれば公道
私道個人が所有している道路字図に地番が書いてあれば私道の可能性あり

ゴミ置き場

今回、ゴミ置き場な気がする!
と疑うのはここです。

もう、明らかにここは!!って感じですよね笑
実際、もう少し離れていたり、分かりづらかったりすることがあります。
少し離れたところに狭い面積で区画されている土地があったら注意です。
近隣住民が共有で持ちあっているゴミ置き場かもしれません。

相続登記特有の物件調査

相続登記の場合は、上記の調査にプラスで以下の調査も行います。

①被相続人が所有していた不動産が他にないか相続人にヒアリングする
②「もしかしたらあの辺りに持っていたかも」といった話がでてきたらその地域の役所で名寄帳を取得する
※名寄帳とは、司法書士目線で言うと、ある地域である人が所有している不動産が全て記載されているとても役立つ書類です。
(正しくは、固定資産課税台帳に登録された土地および家屋を納税義務者ごとにとりまとめたもの。らしいです。)

なぜ相続登記は名寄帳の取得をするのか?

相続登記の場合は、被相続人(亡くなった方)が
生前所有していた全ての土地が対象となります。

県外等遠く離れた地域にも不動産を持っている場合、
近隣の様子しか分からない字図の取得だけでは間に合いません。

そこで、名寄帳を取得して被相続人が他に不動産を持っていなかったか?
の調査が必要です。

名寄せメモ

・発行手数料数:十円~数百円
・対象不動産の地域の役所で取得する
・なので色んなところに不動産を持ってるならすべての地域に請求する
・郵送で取得できる
・委任状が必要
・被相続人の名寄せを取得する場合、戸籍などが必要
( 亡くなった人と委任者(相続人)の関係が分かる書類として)

物件漏れのリスク

実際、司法書士に依頼が来る時点で
物件漏れのリスクはどのくらいあるのか?
売買と相続に分けてみていきます。

売買登記

銀行は融資をするときに、
融資先が他に近隣の不動産を持っていないか丁寧に調査をします。
なぜなら、例えば、、

家がたってる不動産だけに抵当権をつけて前面道路の抵当権を付けていなかった。
お金を返してもらえなくなったときにその土地は売却等されます。
そのときに、前面道路に抵当権がついていなかったら、その不動産に価値はありません。
だって道路に出れないんです。
※実際は何かしらの方法があるのでしょうが、そこは専門外なのでたとえ話くらいできいてください。

当然、銀行以前に、不動産屋さんはこの道のプロですし、
融資があれば銀行が徹底的に調べるので、
相続登記に比べると物件漏れのリスクは低いです。

けど、0ではありません。

2年弱の実務経験でも
融資が絡んでいる案件で物件漏れが2回ありました。

相続登記

売買登記よりもこちらの方が物件漏れのリスクは高いです。
なぜなら、相続登記は基本的に不動産屋さんや銀行が関わらないからです。
相続人の方が、「相続登記をしてください」と依頼をしてくるので
当然物件調査なんてしていません。

なので、最初のヒアリングの時点で「他に不動産持ってなかったですか?」
と丁寧に確認していくことが大切です。

まとめ

後から物件が出てくると費用も変わってくるので、
お互い気持ちよくないですよね。
こちらに落ち度が低かったとしても、
それは不信感へとつながっていく可能性は大いにあります。

不動産登記の依頼がきたら、必ず物件調査をする。
とにかくこれに尽きます。

私は、怪しいと思ったら徹底的に登記情報を取得して
きちんと調べるようにしています。

事務所によっては登記情報1つ取得するのも
結構大変なところがあるときいて驚いた記憶があります。

もちろん、雇い主である事務所の方針は大切にしつつ、
たった数百円でリスクヘッジできるなら、、と
きちんと自分の意思をもって物件調査をすることをお勧めします(^^)

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