あら?この株主総会議事録の押印義務者は一体誰なのだろう。

商業登記

・取締役会設置なし
・株主総会で新たに代表取締役を選任

ある夏の暑い日、
このパターンで作成した議事録を眺めながらふとよぎる不安。

「あら?これって、この人実印いるやん・・」
「ん?いらんくない?いや、いるのか!?今更どの面下げて『実印ください 』 って言ったらいいん・・。」

膨らむ妄想、吹き出す冷や汗。

検索しまくったけど、明確な答えが出てこず、
けど条文の解釈上大丈夫だよね
と腹をくくって登記申請したら
無事に登記完了したので唄います。

それではどうぞ、お聴きください

「あの人の実印はいらない」

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Aメロ 今回のパターンだと出席取締役の個人実印での押印が必要

もう一度おさらいです。

・取締役会設置なし
・株主総会で新たに代表取締役を選任

今回はこのパターンのお話です。
感覚的に、普通に依頼がくる法人さんだと、
このパターンが一番多いかなと思います。

この場合、
出席取締役全員が議事録に個人実印で押印+印鑑証明書の提出が必要です。

ちなみに、これは正しい解釈かわからないのですが、
受験生時代は「会社の乗っ取り防止で必要」と覚えていました。
だって、簡単に代表取締役変更できたら
「あ、乗っ取られちゃった」ってことにもなりかねません。

Bメロ 個人実印が不要なパターンとは

けど、「毎度毎度取締役の実印+印鑑証明て・・」って感じですよね。
なので、代替措置があるのです。
それは、変更前の代表取締役が登記所に提出済みの印鑑を押印している場合です。

例えば、、

株式会社すぐみる
旧取締役・代表取締役:須玖見留
新取締役・代表取締役:須玖見呂

須玖見呂の選任を株主総会で行った。

この場合、原則、株主総会に出席した
須玖見留の個人実印+印鑑証明書の提出が必要。
けど、須玖見留が
代表取締役として法務局に届出をしている法人実印で印鑑を押せば、
実印も印鑑証明も不要。

え?代表取締役としてってなんなん?
それは、議事録の最後にこう書く。

株式会社すぐみる

  代表取締役 須玖見留   ㊞(←法人実印)

これでOKです。

長々と前置きが続きましたが、ここからが本番です。

いよいよサビ あの人の実印はいらいない

Bメロで疑問に思いませんでしたか?

変更前の代表取締役が協力してくれんかったらどうするん・・と。

そう、今回私が冷や汗吹き出しまくったのは、
変更前の代表取締役を解任してて、
その方の名前で法人実印は押せない状況だったのです。

この場合、出席取締役全員の個人実印+印鑑証明書の提出が必要です。

ここで登場「あの人」です。

取締役「あの人」は株主総会に出席義務があるのか

実はこの会社、もう1名、取締役がいました。

「いつもみたいに変更前の代表取締役から実印押してもらうから印鑑証明書いらんわ」
と、高を括って、印鑑証明書不要ですよーっ案内してたんです。

ところが、
変更前の代表取締役は解任してるのその人の名前で実印は押せない。

ということは、あの人の実印+印鑑証明書が必要。

終わった。あのときの軽率な自分をぶん殴ってやりたい。

「え?海外いるから出席できないよ」

お客さんに説明すると、まさかの回答。
え、なにそれ。そもそもの話がかわってるやん。。

そして、血眼になって探しました。

そもそも取締役は株主総会に出席する義務があるのか?

結論 出席義務を規定した条文はないが、説明義務はある(会社法314条)

出席したほうがいいよという根拠は、
この会社法314条の説明義務を果たすために総会に出席しようね。ということ。
これをおろそかにして決行された株主総会は成立自体が怪しい。

逆に、説明義務が生じるような場面がなければ、
株主総会の成立自体が妨げられるものではない。

出席はせず、出席取締役のみ実印と印鑑証明書をもらって
無事、登記完了しました。

ご清聴ありがとうございました。

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